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平成22年度

『認知症高齢者の要介認定に係わる判定指標の開発に関する研究 ~認知機能障害に伴う日常生活評価表の開発』

採択テーマ 『認知症高齢者の要介認定に係わる判定指標の開発に関する研究 ~認知機能障害に伴う日常生活評価表の開発』
研究代表者 福祉マネジメント研究科 教授 今井幸充
採択年度 平成22年度
目 的  高齢者介護の社会化に介護保険制度が果たしてきた役割は大きい。このサービスの給付の基準になるのが要介護度であり、その判定に必要な尺度の一つに「認知症高齢者の日常生活自立度」がある。しかし、平成20年7月「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」報告で、本尺度の科学的根拠が乏しいことから、新しい要介護認定に用いる尺度開発の必要性を示した。そこで、同年10月より本補助金事業を開始し「認知症高齢者の日常生活自立度」の信頼性を検証したところ、認定調査員と医師の「認知症高齢者の日常生活自立度」判定の一致率が40.5%であり、特に「Ⅱa」「Ⅲb」での一致率はそれぞれ2割程度だった。また、両者の不一致の要因としては行動・心理症状(BPSD)の評価が挙げられた。そこで、認知機能に障害がある高齢者の日常生活動作の程度を測定する「認知機能障害に伴う日常生活動作評価表(案)」(以下ADL評価表)と行動と心理状態を評価する「認知機能障害に伴う行動・心理症状評価表(案)」(以下BPSD評価表)の2つの評価表を開発し、平成21年度にはその信頼性・妥当性の検証を行った。DVD を用いた評価者間一致度、リテスト一致度に関する検証では、ADL 評価表、BPSD評価表のいずれにおいても85%以上の評価者間の一致度をみられた。また妥当性の検証では、560例の認知症者の既存尺度のFAST とADL 評価表の相関係数は0.72で、また、Behave-ADとBPSD評価表の相関係数は0.61でいずれも正の相関が認められた。このことから、新評価表は認知機能障害を伴う高齢者のADLとBPSDの評価の信頼性と妥当性が検証されたが、平成21年度調査では独居高齢者ならびに施設入所者の評価は行っていない。またADL評価表とBPSD評価表を用いた総合的な日常生活評価に関する検証も行っていない。
そこで、平成22年度事業の目的は、認知機能の障害を有する独居高齢者、施設入所者を含む全ての要介護高齢者に対して新ADL評価表ならびにBPSD評価表の2つの評価表を用い、彼らの日常生活状態評価を検証する。これらの結果から、「認知機能障害に伴う日常生活動作評価表(ADL評価表)」と行動と心理状態を評価する「認知機能障害に伴う行動・心理症状評価表(BPSD評価表)」が介護保険要介護認定調査時に実施される被保険者の日常生活状態評価に有用であることを検証する。
事業結果 1 新評価表に対する使いやすさ等の調査
  ○ 本研究事業に参加した50名の医師ならびに介護支援専門員・認定調査員232名に新評価表の使いやすさに関するアンケート調査を実施した。ADL-CogならびにBPS- Cogの<適切さ>、<使いやすさ>についての評価は、医師、介護支援専門員・認定調査員ともに高く、介護支援専門員・認定調査員では7割以上、医師は8割以上が「新しい評価表」を支持した。現行の「認知症高齢者の日常生活自立度」と比較した<手間>については、新しい評価表の方が手間や時間がかかるとする回答が医師、介護支援専門員・介護支援専門員ともに4割程度であった。
  ○ 平成21年度調査と比較すると、医師による評価は<適切さ>、<手間>、<使いやすさ>のいずれについても平成22年度調査と概ね似たような結果が得られ、介護支援専門員・認定調査員の評価についても平成21年度調査と比較すると、<適切さ>、<手間>についてはほぼ同様の傾向が見られた。

2 信頼性の検証
  ○ 研究協力者である医師と介護支援専門員・認定調査員が、それぞれ評価対象である独居、施設入所者に面接を行い、その評価結果における一致度の検証を行った。家族等からの同意のあった独居、施設入所の高齢者は56名であった。
  ○ 新たな評価表のADL-Cogは82.1%、BPS-Cogが71.4%、生活困難度が78.6%と高い一致率を示した。それに対して既存の評価表である「認知症高齢者の日常生活自立度」は44.6%、「障害高齢者の日常生活自立度」51.8%であった。なお、FASTの一致率は56.4%、Behave-ADは56.4%であった。
  ○ 不一致について検証すると、ADL-Cogは「カテゴリー4」(やや症状重い方)、BPS-Cogでは「カテゴリー0」「カテゴリーⅡ」(症状軽い方)、生活困難度では「2困難」(中程度)で他の評価の不一致の割合が比較的高かった。また、評価者別の相関分析を行った結果、介護支援専門員・認定調査員のBehave-ADとBPS-Cogと相関がやや低かったことから(相関係数0.62)、BPS-Cogの一致率が多少低いことが明らかになった。

3 妥当性の検証
  ○ 安定性の高い評価データを分析するため、何らかの欠損値のあった評価表ならびにADL評価項目とADL-Cogの結果との間に違いがあった評価表を除いた679サンプルで分析を行った。その結果、FASTとADL-Cogの相関係数は0.7661、Behave-ADとBPS-Cogの相関係数は0.6302であった。「認知症高齢者の日常生活自立度」とFASTとの相関係数は0.7319、Behave-ADは0.5106であった。以上のことから、新評価表は現行の日常生活自立度よりも、既存尺度との相関関係が高い。
  ○ 評価者ごとの分析をみると、医師と介護支援専門員等の新評価表ADL-Cogと既存尺度FASTとの相関係数の比較では、医師の相関係数が高く、この結果は平成21年度と同様の傾向であった。
  ○ 「同居」のADL-CogとFASTの相関係数が0.7489、BPS-CogとBehave-ADは0.5717、「独居」では、ADL-Cogと既存尺度との相関が0.8045、BPS-Cogについては現行尺度のほうが高い相関係数を示したが、どちらも0.6程度の値を示した。「施設」でも、新たな評価表のほうが現行尺度より相関係数が高い結果であった。また、独居、施設利用者を加えて調査を行ったが、同居高齢者以上に高い相関関係を示す結果も得られた。このことから、居住環境にかかわらず、新評価表は、認知症高齢者の状況を正しく評価することを検証した。
  ○ 認知症であるとの記載のない認知機能障害を有する高齢者の評価結果を除外すると、その相関係数は、ADL-CogとFASTでは0.7982、BPS-CogとBehave-ADは0.6030となり、さらに、身体合併症がある症例を除いて分析すると、その値は0.8073、0.7256となり、さらに相関が高くなることが明らかになった。他方、同じ条件で現行尺度と既存尺度との間の相関を検証すると、その相関係数が高くならないことから、新しい評価表は認知症者の状態をさらに正しく評価することができるものと考えられる。

4 総合評価方法の検討
  ○ 平成22年度は新しい評価方法として、2つの評価表の組み合せからひとつの指標「認知機能障害に伴う生活困難度評価表」を作成し、これを外的基準として新たな評価表や既存尺度、現行尺度との関係を分析するとともに、その指標にもとづく総合評価方法を検討することとした。
  ○ 調査結果に基づきADL-Cog とBPS-Cogの組み合わせからセルごとの生活困難度の構成割合を見ると、「生活困難度1」と想定したセルでは、期待値と実測値が6~8割であったが、「生活困難度2」として想定したADL-Cog3でBPS-Cog0、ADL-Cog2でBPS-CogⅠなどのセルでは、トップカテゴリーが「生活困難度1」であった。同時に、「生活困難度3」として想定した、4-0のセルもトップカテゴリーが「生活困難度2」であり、全体として想定よりも軽度なカテゴリーへの評価だった。なおADL-Cog0とBPS-Cog3-Ⅲ、ADL-Cog1と BPS-CogⅡでは、症例数がないか少ないため、分析が実施できなかった。
  ○ 実際に回答のあった生活困難度の該当数(実測値)と、あらかじめ分類された生活困難度(理論値)との一致数から求められる一致率は、「生活困難度3」で一致率が最も高く89.3%く、逆に「生活困難度1」で最も低く28.5%であった。平均は、51.7%で半分程度の一致率であった。

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『介護職員の長期的キャリアパス形成に関する調査』

採択テーマ 『介護職員の長期的キャリアパス形成に関する調査』
研究代表者 福祉マネジメント研究科 准教授 藤井賢一郎
採択年度 平成22年度
目 的 ○キャリアの育成を長期的に介護職員している者の実態(客観的キャリア、動機・価値・資質)や課題(職場の期待とのミスマッチ等)を把握する。
○特に、初級~中堅介護職員(3~5年勤務)者に対して、専門職としての長期キャリアの可能性を描く資料を提示する。
事業結果 ○ヒアリング調査については、介護職員が中長期の勤務の中で、成長をうながす経験やそれを促進する要因(職員自身の信念や職場の風土)についてなどを一定程度明らかにすることができ、中堅職員を育成するための方向性・考え方に示唆をあたえることができた。
○事例集については、設定したキャリアモデルに相当する典型的な職員を見出し、わかりやすい冊子として作成することができた。今後、PDF化し、ホームページ等で広く閲覧するとともに、報告書を配布して、介護職員が成長していく事の可能性やポジティブなイメージを醸成していきたい。
○アンケート結果については、リーダーが生まれやすい環境やフォロワーシップの形成等について明らかにするとともに、実務研修へのニーズについて明らかにした。また、看護師との比較では、介護職員は、自律性を重視するが、長期的なキャリアについては十分描けておらず、キャリアコミットメントは低くなっているなど、介護職員のキャリアイメージに関して示唆が得られた。
○今回、主として10年前後の介護職員にスポットを当てることで、介護職員の成長や課題を明らかにするとともに、キャリア像例を示すことが出来た。キャリア形成段階ごとの像や課題を明らかにする意義が明らかにされてきたため、今後、更にキャリアが上の介護職員(20年前後)のキャリア形成や、1~3年目、5年前後における課題について明らかにし、広く、介護職員や関係者への理解につなげていきたい。

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『高齢者ケア施設における質の高い看護・介護を促進する現任者教育のあり方に関する調査研究事業』

採択テーマ 『高齢者ケア施設における質の高い看護・介護を促進する現任者教育のあり方に関する調査研究事業』
研究代表者 社会福祉学部 准教授 佐々木由惠
採択年度 平成22年度
目 的  医療適正化政策のひとつとして、入院短縮化が図られているなか、退院後の高齢者ケアを提供する高齢者ケア施設の役割が重要性は益々高まってきている。しかし、高齢者ケア施設における看護・介護サービスの提供内容の実態はこれまで十分明らかにされておらず、利用高齢者の生活の質を高めるサービス内容を検討することが必要である。
他方、高齢社会に伴い看護・介護職の人員増加が図られてきたが、人員確保の反面、看護・介護サービス提供場面におけるこれらの専門職の不安が現場で多く聞かれ、質の高いサービス提供を阻害する要因となっていることがうかがわれる。サービス提供時に看護・介護職者が直面する不安を低減できるような現任者教育研修のあり方と、その研修を実施できるリーダー人材育成が求められる。
そこで本事業では、以下のことを目的として行う。
 (1)高齢者ケア施設における看護・介護サービス内容の実態を明らかにする。
 (2)高齢者ケア施設で看護・介護職者がサービス提供時に直面する不安の内容とその要因を明らかにする。
 (3)高齢者ケア施設における質の高い看護・介護サービスを可能にする現任教育研究のモデル、および、そのリーダー人材育成のあり方を考案し、効果検証を行う。
事業結果  医療的ケアを実施する際の不安の程度は勤務年数が短いほど小さく、長いほど大きいことが明らかになった。介護職は医療的知識を学びたいが、法的に未整備でもあり医療的ケアを行いたくないと考えている。実習では経管栄養・口腔内吸引を行ったが、研修を受けることで介護職の不安の程度が軽減されたが限界があり看護職との連携のもとに継続的に行う体制の構築が必要である。介護現場で中核を担う人材は看護職との連携を図りつつ、医療に関する知識と技術を身につけた人材が必要である。

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このページは研究調整事務が担当しています



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