ソーシャルワークを語る

「広い視野と知識を持って高齢者と接してほしい」 (財)日本老人福祉財団理事長 田島誠一 教授

現在、日本老人福祉財団の理事長であり、経営者として従業員約1200人を抱える立場にある田島さんですが、福祉事業の経営に必要なことは何でしょう?

福祉、とりわけ介護に関しては営利事業者がたくさん参入してきました。私のところも介護サービス事業を行っていますが、財団法人ですので、非営利を貫き、適正な利益をあげて事業を発展させていくというのが基本となっています。まだまだ高齢者の介護付き住宅事情というのは混とんとしています。

より良い介護付きの有料老人ホームを提供して、高齢者のみなさんに安心としあわせを提供したいと思っています。

サービス管理で一番心がけていることは?

経営者としては、根本の原理、理念についてしつこいくらいに言い続けることが大事だと思っています。入居者はお金をくれるお客さんではなく、尊厳を持った人間なんだということが理解できていないと、この仕事はやっていけませんから。

具体的な取り組みとしやっているのは、“事故ゼロ運動”。事故が起こってしまった場合は、すぐ報告。そして個人の責任ではなく、組織の責任として考えるようにしています。

もう一つは“研究研修活動”。“こうしたらもっといいケアができる”とか、毎日働いている現場に埋もれている事実を研究し、実践で活かしていく試みです。さらに昨年からもう一つ増えた“入居者相談”。相談事はその日のうちに解決はできなくても、その糸口は見つけるように努力しています。

ソーシャルワーカーとして経営にたずさわるということは、どういう意味があるのでしょうか?

私は今まで病院の事務長も経験しましたし、保育園の園長もやりました。とくに病院の経営は短期的に儲けようと思えばできてしまうわけですが、利益優先には考えなかったですね。それから利益を地域が必要としているものへどう還元していくか、ということを考えられたのは良かったと思います。

お金は大事だけれど、お金だけじゃない。そう考えられるのはソーシャルワークの勉強をしていたからだと思いますね。

その気持ちを貫いて今までやってこられたのは、使命感からですか?

そんなカッコいいものではないけれど、どうせ仕事をするのであれば、人と関わりのある仕事をしたいと思ってこの大学を選びましたから。

二宮尊徳(金次郎)の言葉にもありますよね、“道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である”というのが。これはもしかするとソーシャルワークの運営理論に通ずるものがあるのかもしれません。

いま老人福祉の他に、ターミナルケアについてのNPO法人の監事もやっています。たまたま就職してすぐに母親がガンで苦しんで亡くなりまして…。僕はホスピスにも、ソーシャルワークを学んだ人間がもっと積極的に入っていったほうがいいと思っています。

こちらも私のライフワークとしてやっていきたいですね。

この大学の卒業生として、後輩たちへ一言アドバイスをください。

介護施設で“わしは若いころ戦争に行った”と言うおじいさんに向かって“湾岸戦争ですか?”って聞いた人がいたらしい(苦笑)。この大学の出身者ではないと思いますが…。

社会福祉はいろんな文化に触れて視野を広く持たないとやっていけない仕事です。若い方々にはもっと本を読んでほしいですね。別に社会福祉の本じゃなくてもかまわない。小説や芸術などに触れて、知識を広げてほしいですね。

コメント

介護保険施行後、福祉サービス経営主体の広がりが顕著になっています。サービス利用者の権利と尊厳が守られ、経営主体の適正な利益もまた確保される健全な環境が醸成されることが望まれます。このためには、法律・制度への理解だけではなく、経営へ深い理解が求められます。また、何よりも利用者へのあつい共感と福祉サービスの深い理解が求められます。市場原理的な考え方に基づく「ビジネス」ではない、ヒューマンなビジネスを考えていきたいと念じています。

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田島誠一 教授

略歴

1973年、日本社会事業大学卒業、(社福)聖隷福祉事業団就職、保育士、保育園長、病院事務長、法人総務部長、有料老人ホーム施設長、常務理事等を歴任。

現在(財)日本老人福祉財団理事長。

担当科目

ビジネスマネジメント研究・演習・実習/ソーシャルワーク実習・実習指導/福祉企業論

主な研究分野

福祉経営、医療経営

著書

『総合施設体系の現状と課題』(共著、「明日の高齢者ケア10巻」、中央法規出版、1993.12)

『社会福祉法人の経営改革〜理念・使命の明確化、経営の効率性と人材の育成・確保』(「社会福祉研究」No.76、財団法人鉄道弘済会、1999.10.)

『改訂病院管理』(共著、「医療秘書実務シリーズ2巻」、健帛社、2001.2)