ソーシャルワークを語る

「いつも子どもたちに対する尊敬や畏敬の念を忘れずに」 日本スクールソーシャルワーク協会会長 山下英三郎 教授

スクールソーシャルワークを実践するにあたって、大切にしていることはなんでしょうか?

自分をいい状態に保ちながらクライアントと向かい合うこと。自分が不機嫌だったり、落ち込んでいたら相手の話を十分には聞けません。

それから専門家としての言葉の重さを自覚すること。私に相談して傷つけられたとクライアントが思うようなことはしたくないですから。そして常にクライアントに対する敬意を抱くこと。

10年生きている子供には10年間分の生命の奇跡がある、そういったことに対する尊敬や畏敬の念は常に持つようにしています。

山下さんがスクールソーシャルワークに取り組み続けてきた理由は?

関心を持ったのは1970年代の終わり。教師に暴力をふるったり、教室の窓ガラスを割ったりという校内暴力が社会現象として起こっていた時期でした。

当時は“子供が変わったんだ”“親のしつけがなっていないんだ”と問題の根源は個人にあるとされていました。

でも私は、やっていることが良いか悪いかは別として、そういう行動に至った理由をきちんと聞かなくてはいけないと考えました。

しかし日本にはそういうシステムがない…。そんなときアメリカのスクールソーシャルワーカーと呼ばれる人たちが、子供たちをサポートしていると聞いて関心を持ったんです。当時はそれが日本でできるかどうか目算はなかったのですが、ニーズはあるに違いないと思い、取り組み始めました。

山下さんが紹介されている『修復的対話法』とはどんな方法なのですか?

加害者被害者、両者の中で起きたことについて、平和的に解決したり、傷を癒したりする方法です。

被害者は自分が加害者の言葉によってこんな影響を受けたと伝える。加害者は自分の言葉がどんな風に相手に伝わっていたか気づくことができる。そうすることで加害者に申し訳ないという気持ちが出てきたり、被害者にとっては相手の反省の言葉を聞くことによって許す気持ちになれたり、といった効果があります。

いま、国の方でスクールソーシャルワーカーを活用するという動きがありますね。

私が活動し始めて20年、ようやく今の流れになってきました。しかし、まだまだ人材が少ない。

スクールソーシャルワーカーは、学校制度の中で雇われて活動します。クライアントは生徒たちがメインですが、家族、教職員の場合もあります。メディカルソーシャルワーカーが医療について、ファミリーソーシャルワーカーが児童の社会的養護について知らなくては務まらないのと同じで、スクールソーシャルワーカーには学校や教育に関する知識が必要なのは当然です。

しかし、私は根本のソーシャルワークの価値観、理念は同じだと思っています。

これからスクールソーシャルワーカーを目指す、若い人たちへメッセージを。

先日も新人のワーカーがとても不安を感じていたので、こう言ったんです。“あなたを待っている人がいるんだから”と。

本当に生きていくのさえ大変だなと思える子どもたちが、ある日生きる意欲を持てるように変わっていく。そういう瞬間に立ち会う喜びを得られるのがスクールソーシャルワーカー。喜びも大変さも含めて、面白さが詰まった仕事だと私は思っています。

問題点ばかり見ないで、与えられるものに注目して、たくさんの喜びを発見してください。

コメント

人々の孤立感が生み出している深刻な社会問題を軽減するための方法として、人的および物的資源をつなぐソーシャルワークの現代における意義と可能性について、学生とともに考え共有することを願っている。さまざまな角度からソーシャルワーク実践のやりがいについて論じたい。

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山下英三郎 教授

略歴

1969年 早稲田大学法学部卒業。

1986年 ユタ大学ソーシャルワーク修士課程卒業。

現在、日本社会事業大学社会福祉学部教授。日本スクールソーシャルワーク協会会長。

担当科目

ソーシャルワーク理論a/危機介入法

主な研究分野

スクールソーシャルワーク、国際福祉(アジア)、修復的対話

著書

『相談援助:自らを問い・可能性を探る』(学苑社、2006年)

『スクールソーシャルワーク −学校における新たな子ども支援システムー』(学苑社、2003年)

『きみの心のサポーター』(旬報社、2003年)など