ソーシャルワークを語る

「常に切磋琢磨、努力を惜しまず貫いてほしい」 対人援助職トレーナー・フリーランス 奥川幸子 客員教授

奥川さんは、ソーシャルワーカーをどのような仕事だと考えていますか?

0歳から高齢者まで、人はみな生きているプロセスの中で、いろいろなトラブルや達成課題に遭遇しますよね。その中には自分自身や身内、親しい人たちの力だけでは対処できない課題が生じます。

その際に、問題を抱えた当事者はもちろん関係者に対しても、しっかりとしたアセスメントができて、しかるべき見通しを立てられて、方向づけしていくことができるのがソーシャルワーカーなんです。

この役割をきちっと果たすためには、問題が発生する前、または何かこう兆しが生じたときに、問題を抱えた人が相談できる機関が街の要所要所にあることがとっても大事だと思います。そしてなおかつソーシャルワーカーがそこにいることが重要ですね。専門職がいないと、やっぱり相当手遅れになる人がたくさんいるのです。

それからタイミングも大事です。初動期にどれだけ適切な対応ができるかは、私自身の体験からもとても重要だと感じています。病気と同じで、悪くならないうちに早期対応しなければいけないのです。

対応策としては、初期と問題が深刻化した後とでは違うのでしょうか?

基本は同じです。当事者をトータルに見ていかないといけません。トータルにというのは、目の前のことだけでなく過去現在未来の状況を見積もった上で今の問題に対して援助をするということです。

ソーシャルワークの基本は、相談援助能力を持って面接をきちんと行い、かつネットワークを結ぶこと。これが出来る人でないと、役に立つソーシャルワーカーだとは言えないでしょう。

いま、そのそういうソーシャルワーカーが必要なんだということを理解している人もいるのでしょうが、まだ日本ではあまりソーシャルワーカーの実在の姿が見えにくいとも言われていますよね。

それは厳しいことを言えば、ソーシャルワーカーたちがサボってきた、自分の腕を磨いてこなかった部分があるのも一因なのではないでしょうか。常に切磋琢磨しないと、この仕事は身に付いていきませんから。

教育の責任も大きいと感じますか?

それもあると思いますね。どれだけの人材を育ててこられたのか?と考えると、反省せずにはいられないでしょう。これだけ少子化が進み、介護保険が始まり…いまほど本物のソーシャルワーカーが必要とされている時代なんて、これまではなかったんですから。なのに、それに応えられる人材が少ないということが、同じ仕事をやってきた人間としてはすごく悔しいんです。

もっともっと胸を張って“この人は絶対大丈夫、プロフェッショナルですよ”と言える人材をたくさん育てていかなければ。

では、真のプロのソーシャルワーカーを目指すために必要なことは?

内的向上心は大事ですね。目の前の仕事をこなしていくだけなら、切磋琢磨する必要なくできてしまうでしょう。でも、自分の技術を磨こうと思ったら、努力はし続けていかなければいけません。それは、誰も褒めてくれることはない、地道な作業です。

それでもソーシャルワーカーを目指す方々には、プロフェッショナルとしてのプライドと倫理観、それから克己心を持ち続けて、努力を惜しまず貫いてほしいですね。

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奥川幸子 客員教授

略歴

1972年4月より東京都養育院附属病院(現・東京都老人医療センター)で24年間、老人医療の場で医療ソーシャルワーカーとして勤務。

作家の遠藤周作氏が提唱した「病院ボランティア―患者の話を聴く―」の組織化を手伝い、研修を担当。「遠藤ボランティアグループ」顧問。

1984年からグループスーパーヴィジョンを始め、毎月1回「奥川グループスーパーヴィジョン」として仲間同士が互いに支えあい高めあうグループに発展し、同時期より時間が許す範囲で、個人スーパーヴィジョンも引き受けてきた。

1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動中。