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福祉のみかた 第4回

福祉を学ぶだけでは、福祉の問題を解決できないのでしょうか?

学生たちが福祉を専門的に学ぶ、日本社会事業大学。
4月には、いろいろなサークルによる新入生への勧誘が盛んに行われます。
福祉の現場へ実際に関わっていこうとするボランティアサークルが多いなか、他の大学との交流活動を行う、ちょっと風変わりなサークルがあります。

その名も、たんぽぽ。
「多職種連携」をテーマに掲げる、このサークルの交流相手は、必ずしも福祉を専門とする人たちではないようです。
彼らは、なぜ他大学との交流が大切と考えるのでしょう。
また、この活動を通じてどんなことができるのか。福祉を学ぶだけでは、福祉の問題を解決できないのでしょうか?

福祉は、人を幸せにすること。だから、いろいろな視点が欠かせません

他の分野とつながることによって、福祉は成り立っています

内田: 大学へ入ったばかりの頃は、福祉を学ぶことしか考えていませんでした。僕も、福祉についてちゃんと学べばそれで良い、と思っていたのかもしれませんね。学外へ目を向けるきっかけになったのは、毎年6月に催される学内学会(社会福祉研究大会)。そこで開かれた他大学との交流ワークショップへ誘ってくれたのが、たんぽぽを立ち上げた先輩でした。
「多職種連携」という考えそのものは、大学の授業などでいつも強調されることではありました。2年生になれば、事例検討の授業のなかで、社会福祉士だけで解決する課題は少なく、何かしら他の職種の人と一緒に取り組んでいくケースが多い、ということも学ぶわけです。でも僕は、そのワークショップに参加することで、他の職種との連携がどのように大切なのかを、1年生のうちから掴めたような気がします。

中原: 「福祉の問題を解決するために多職種連携が必要である」というのなら、「福祉の学びは他の職種にとっても役に立つ」という、相手の側へ置き換えた見方も成り立ちそうですよね。誰かのために何かをすること、というふうに福祉を広く捉えていけば、どんな仕事にだって福祉の要素が含まれることになる、と僕は思います。ちょっとエラそうな言い方ですけど、福祉の学びというものははじめから他の分野とつながっている、と考えてみれば良いのではないでしょうか。

異なる視点からの知見やキャラクターの違いがおもしろい

内田: 僕が初めて接した交流ワークショップへは、本学の他に、国立看護大学校と明治薬科大学という、同じ清瀬市にある三つの大学のサークルが参加しました。共通のテーマをそれぞれに異なる視点から捉えながら、いろいろな話を交わされることが、とにかくおもしろかったです。「単科大学のなかで専門性を高めることは重要だけど、視野を広げるには他の大学とどんどん交わっていかなきゃ」という先輩の言葉に納得して、たんぽぽへ加わったのです。
その次の学内学会では、「認知症」をテーマにワークショップを行ったのですが、たとえば明治薬科大学さんの発表で、薬の副作用や、認知症患者に対する薬剤師の役割について知ることができました。「医療と福祉の連携」とは、よくいわれることですが、ああ、そういう角度からものを見られれば、クライアントにより良い支援ができるようになるな、と実感できたのです。

中原: そういった知見だけでなく、他の分野を学ぶ人たちのキャラクターに触れられたことも、僕にはとても役立ちました。もちろん人それぞれですけれど、本学にはやはり本学の気質があるように、薬科大学の人にも、それなりのカラーのようなものがあるように感じたのです。それが、将来の職種による気質にもつながっていくのであれば、実際に他の職種の人と関わる現場があったときに、どうコミュニケートしていけば良いのかがわかってきそうですよね。

交流する分野をこれからはもっと広げていきたい

内田: 学内学会では、これまで身近な地域にある看護や薬学の大学と交流してきたわけですが、これからはさらに広い分野の人たちとも交わっていきたいですね。たとえば、教育を学ぶ人たち。とくに小学校教育の分野の人と話し合っていけば、本学で保育を学ぶ人たちにとって、卒園後の小学校での教育を念頭に置いた保育ができるようになるかもしれません。逆に、これから小学校の先生になろうとする人が福祉を知れば、誰かのために何かをする営みの大切さについて、いつか子どもたちに伝えてもらえるかもしれませんよね。
そういった広がりを持たせていくために、SNSなどでもっと積極的な発信や呼びかけを行っていこうと思います。サークルではなく、個人で参加してもらうかたちも考えられます。

中原: 建築を学ぶ人との交流もおもしろそうですね。こちらが相手から学ぶだけでなく、相手にも学んでもらえるところがあると思うのです。福祉の視点を取り入れた人が設計する建物こそ、人にやさしい建築となるような気がしませんか。また、僕は法学にも興味があります。法律を学ぶ人たちと交流することで、たとえば更生保護や犯罪者心理について、いろいろ教えられるところが多いのではないでしょうか。 そういった交流相手の条件がある程度具体的になってくれば、いっそ後援会やシンポジウムといった他大学での催しへこちらから出かけていって、積極的につながりを作っていくやり方もありだと思います。

「福祉を知る」「福祉を知ってもらう」「他分野を知る」という3つの軸

内田: これまで触れてきた「他分野を知る」活動だけでなく、たんぽぽには、「福祉を知る」「福祉を知ってもらう」という、もう二つの軸があります。
日常的な活動としては、僕たちが授業でやった事例検討を、下級生も交えて再検討する勉強会を行っています。自分たちには復習となるし、下級生にとっては予習となるので、理解を深めることができます。交流会で他分野の人から質問を受けたときなどに、こちら側がきちんと答えて、相手に「福祉を知ってもらう」ためにも、「福祉を知る」勉強会は大切ですよね。

中原: 「福祉を知ってもらう」の実践としては、「思い出ファッションショー(※)」という大きなイベントも手がけました。ポータルサイトのニュースでも取りあげられたので、たんぽぽというサークルを知ってもらう役割も果たしてくれたかもしれません。活動をするうえでは、一定の人数も必要になってきますから。 ただ、それなりに話題となったこうした企画も、ただ定例化するのではなく、他分野の人たちと一緒に手がけることで、もっと可能性を広げていけたらと考えています。

思い出ファッションショー
家事代行サービスのソーシャルベンチャーで、内田さんがインターンをしていたとき、部屋の片付けの仕事で、「思い出の詰まった服を捨てられない」高齢者が多くいることに気づいた。そこで、「服を処分する前にお別れの儀式をしては?」と思いついたファッションショー。
2017年12月、思い出がたくさん詰まった服を、高齢者自らが着用しモデルとなって披露するファッションショーを、たんぽぽが開催。高齢者は服の思い出を楽しみ、参加者にその思い出を紹介して共有する催しで、地域交流も兼ねたイベントとして注目された。

あたり前の暮らしのなかにある福祉のかたちを発信していきたい

中原: 交流会を開くと、相手側から「福祉をやっていてエラいね」と、ときどき言われるんです。でも、どんな仕事にも福祉の要素はあると考える僕には、やはり抵抗感がある言葉です。「障がい者だから」「高齢者だから」じゃなくて、「困っている人がいるから助けよう」というぐらいの感覚が良いように感じます。

内田: 福祉を特別なものと捉えてしまう人が多いですよね。福祉には「人の幸せをつくる」という意味もあるわけですから、いっそ「困っている人」だけでなく「普通に生きている人」をも、もっと幸せにしていくことだ、と捉えてもいけそうですよね。その表れの一つが、「思い出 ファッションショー」のようなものではないでしょうか。 そんな、あたり前の暮らしのなかにある福祉のかたちを発信しながら、これからも自分たちなりの活動のあり方を探っていきたいと思います。


〒204-8555 東京都清瀬市竹丘3-1-30
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