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福祉のみかた 第8回

ホームレスの方は少なくなっているんじゃないですか?

街や公園を歩いていて、ホームレスと呼ばれる人たちの姿を見かけることが、この頃、ちょっとだけ少なくなったかもしれません。
格差社会ともいわれることも多い時代なのに、それほどみんなが豊かになってきたのでしょうか。
あるいは、いろいろな福祉施策が行き届いてきたからなのでしょうか。

そんななか、さいたま市で生活に困った人たちの相談を受け支援を行っている、独立型社会福祉士事務所NPO法人ほっとポットの活動が注目を集めています。
福祉事務所のケースワーカーが対応しているホームレスの支援に、なぜ民間の支援が必要とされているのでしょうか。
日本社会事業大学を卒業し、このNPO法人で働くお二人に聞いてみました。

福祉とうまく繫がれない人がたくさんいるんです

数字からは、生活に困った人たちの姿は見えてきません

林田: 厚生労働省のホームレスの実態に関する全国調査では、たしかにホームレスの人たちの数は減っていることになっています。でも、それは現状を正確に反映している数字でしょうか?

ホームレス自立支援法では「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」と定義しています。しかし、あくまでその調査は、埼玉では主に行政職員の目視によるものです。つまり、目視で把握しやすい場所からは減ってきている、ということでしかなく、たとえば「占有できる住居のない状態の方」という定義で捉え直したら、はたして結果はどうなるでしょう。

住むところがないまま、ネットカフェ、24時間営業の入浴施設などで過ごしている人たちから、私たちが相談を受けることも多いのですが、彼らの実質はホームレスに限りなく近い状態です。そして、そのなかには、20代や30代の若い方たちも増えている印象です。

池田: 住み込みで働いているために、職を失えば住まいも失ってしまう人もいれば、高齢になって、肉体的にキツい仕事を続けられない方もいます。その結果収入が減り、家賃が払えなくなったり、電気やガス、水道などのライフラインが止められたりしてしまう場合もあり、住まいを失う危険にさらされている方は、実はとても多いのではないでしょうか。

ホームレスの方が減ってきている、という見方は、あくまで表面的なもの。それどころか、実際にはむしろ増えているような気さえします。私たちが相談を受け、支援に関わっている方は、住まいを失くしその日の食事もままならないという、「健康で文化的な最低限度の生活」を下回る状態で、なんとかその日その日をしのいできた、という状態の方々ばかりです。

生活保護制度へのコーディネートを妨げるハードルがあるんです

林田: 生活は苦しいのにしっかりした職に就けない事情があるのなら、生活保護を受ければ良い、という声があります。もちろんその通りであり、高齢化を迎えているこの日本では、国民年金制度等の高齢者への社会保障制度のあり方も大きな問題となっています。そのような現状を背景に、平成29年度の厚生労働白書では生活保護受給者世帯数は減少の傾向にあるが、世帯類型別の高齢者世帯だけは増加傾向を示していると報告されています。

この日本において、支援を必要とする人に生活保護をはじめとする公的扶助制度がしっかり届いているかといえば、残念ながらそうではありません。それらの給付やサービスの存在、自分に受給資格があることなどを知らなかったり、うまく利用できなかったりする人も多いんです。それは、生活保護制度に関する正しい情報を得ることができないために、生活保護制度を自分が活用できることを知れない場合もあれば、手続きが難しかったり、行政側がきちんとフォローしきれなかったりする場合もあります。

池田: 生活保護をめぐる、実態とはかけ離れた情報が、インターネットの書き込みなどで一人歩きすることで、これらの福祉制度の利用自体が、社会からバッシングを受けるような、おかしなムードを感じますね。そのせいで、人の命を保障するための制度なのに、必要とする方にとって、利用のハードルがすごく高くなってしまう現実が生まれています。 公的扶助制度があっても、それにうまく繫がれない方たちをどう支えたら良いのか。私たちのような、NPO法人による支援が求められる理由がそこにあります。

貧困の悪循環から抜け出し、公的扶助制度へ繋げていくためには

林田: 生活に困っている方も、働く意欲を持っています。けれど、その状態へ至るまでにさまざまな問題を抱えているために、意欲に身体がついていかないことが多くあります。たとえば、アルコール依存症やギャンブル依存症。また、精神疾患や知的障害によって、うまく生活を安定させることが難しい方もいます。

一人ひとりの状況を支えながら、「なぜ生活が行き詰まってしまったのか」「なぜ住まいを失ってしまったのか」という問題を一緒に考え、その人に必要な福祉制度へ繋げていくことが大切なんです。


池田: 生活を立て直すためには、住まいが欠かせません。でも、そうした方たちは、家族や友達といった人間関係も失っていることも多いんです。そうすると、家を借りたくても保証人がいないことになります。また、仕事に就こうとしても、やはり保証人を求められることになり、悪循環に陥ります。

ですから、私たちは、住まいを提供しながら福祉制度へ繋げていくとともに、一人暮らしをしていけるよう支えるところから始めています。自立支援といっても、さまざまな段階があるわけで、まずは一人で生活ができることを目標とする支援活動といえます。

林田: 保証人というのは、社会生活のなかで、実はとても重視されています。住まいも身寄りもない方を守る仕組みが、日本では数少ないため、生活を安定させようと、八方ふさがりとなってしまいやすい。

そのような方のなかには、貧しさを背景に罪を犯してしまった人も多くいます。弁護士などを通して、私たちの施設へ入所し、アパートや他の社会福祉施設へ転居する方もいます。その時、保証人がいないことや、犯罪歴を理由に断られた経験が何度もありました。福祉関係者のなかでさえ、そのような認識を持っていることに、ずいぶん驚きましたが、しっかりと話し合いながら、理解を得ていきたいと思っています。

支援活動の柱は「小規模巡回型の地域生活サポートホーム」と「グループホーム」

池田: ほっとポットの支援活動の柱は、まず「地域生活サポートホーム」です。戸建て住宅を利用し、次の住まいへ繋げることを目標にした施設(無料低額宿泊所等)です。職員は常駐せず、施設への巡回を通して利用者の生活状況を把握します。巡回で得られた利用者の生活状況から一人ひとり異なる課題を捉え、必要と思われる支援を検討し、アパート生活が実現できる環境を整えていきます。

その支援活動は、多岐にわたる関係機関と連携しなければ、成り立ちません。多くの人と共に解決を図っていくことが、とても大切なんです。

ほっとポットの活動は、ホームレスの方たちのネットワークでわりと知られているらしく、「自分も助けてほしい」と相談に来てくださる方が多いです。役所や病院など、関係機関から紹介されることもあります。地域生活サポートホームでの生活が安定したら、次はアパートで一人暮らしをするのか、他の社会福祉施設へ入所するのかを一緒に考えていきます。

林田: ただ、地域生活サポートホームへ身を寄せるなかには、障害のある人もおり、なかなか次のステップへ進みにくいことも多いんです。そこで、障害がある方のためのグループホームも開設しました。ここには、常駐の職員がいて、金銭管理や服薬管理も行うだけでなく、日中活動場所や仕事場を見つけるためのサポートも行っています。

障害がある方は、過去にいじめられ、不安感が強くなっている場合が多いです。それでも、グループホームであれば、「ただいま」「おかえりなさい」と挨拶を交わせる環境があり、不安や心配事を相談してもらえる関係を少しずつ構築します。不安を抱きながら生活を過ごすのではなく、職員に安心して「困った」と言えるような関わりを心がけています。

私たちのところへ来て、50歳にして初めて障害者手帳を取得した方もおられます。今まで自分の力だけでどのように生きてこられたのか、福祉制度に繋がっていなかったことでどれだけ辛い思いをされてきたのか、とても想像しきれないものがあります。

地域の皆さんに支えられながら活動している姿を発信していきたい

林田: 「地域生活サポートホーム」は現在16カ所、「障害者グループホーム」は5カ所ありますが、地域の皆さんに支えていただきながらの活動です。まず、大家さんに理解していただいて、物件を確保しなくてはなりません。説明会を開いて、地域の方々にもご理解やご協力をを求めていき、必要なら個別に説明をさせてもらっています。

開設してから、職員だけでなく入居する人たちも、地域の人たちとあいさつを交わしたり、自治会に加入したり、少しずつ地域に溶け込めるように心がけています。

池田: 私たちがどんな活動をしているのかを、こまめに発信していくことが大事だと思います。地域の方たちに理解していただくには、福祉制度と繋がっていない人たちがいることや、その方たちも福祉制度の利用によって生活が安定することなど、まだまだ発信していかなければならない情報やメッセージが、たくさんあります。

福祉の仕事を目指す人たちへ伝えたいことがあります

池田: 将来どのような現場で福祉の仕事に携わるかを考え始めた時に、福祉の多くの仕事が分野ごとに分かれていることに疑問を持ちました。大学の学びの中では分野の垣根を越え支援していく「ジェネラルソーシャルワーク」というソーシャルワーカーのあり方を学んだのにもかかわらず、支援の現場では「高齢」「障害」「児童」のように分野ごとに領域が分かれている。社会福祉士という資格の取得を志す中で、自分の実践が領域ごとに切り分けられてしまうことにもったいなさを感じたんです。

そこで、支援対象を分けるのではなく、さまざまな背景をもとに困っている方の支援をする現場に魅力を感じ、この職場を選びました。

ただ、ホームレスであった方への支援は、私たちの支援だけでは成り立ちません。自分だけやるのではなく、一人ひとりの支援課題に合わせた必要な福祉領域の支援者と協力し、支援していく。そのためには、やはり日々学び広い視野を持って福祉について学び続けることが必要だとも感じています。

これから福祉を目指す人たちには、学ぶ意欲をもって自ら動いてほしいですね。学ぼうとすれば快く応えてもらえることも多いので、私もシンポジウムや講演会へできるだけ足を運んで学ぶようにしています。

林田: 地域や社会と深く関わるほど、福祉関係のことばかりではなく、他分野を幅広く学ぶことが必要だと痛感しています。さまざまな事情を抱えた方が相談に訪れるのですから、一般的な知識や常識を知らないまま相談に乗ることは、相談内容が理解できなかったり、十分な情報提供ができません。

福祉は社会問題を映す鏡だとは思いますが、一方で、大きな社会の一部でしかないともいえます。授業や教科書で学んだことだけでは、やはり足りないので、社会問題全体をより多く知るために自ら吸収していくしかないのではないでしょうか。

相談に来所した方への支援を通し、その方に「人生が変わった!」「出会えてよかった!」と思ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。


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