社会福祉実践研究(令和5年度)
研究代表者
永嶋 昌樹
研究課題
農福連携による多世代交流プロジェクトの実践と評価
研究結果の概要
本研究は、世代間の分断をなくして相互理解を進め、高齢者と子どものそれぞれに関連する社会的な課題を同時に解決する手段として、農福連携による世代間交流活動の効果を実証的に検証し、高齢者と子どもとの交流を手掛かりとした地域づくりの可能性を探ることを目的とした。
具体的には、①農福連携による高齢者と子どもとの世代間交流活動の実施、②そのような活動が地域に及ぼす影響・効果の検証、の2点を主眼とした取組みであった。
当該研究課題における「農福連携」とは、園芸や農作業等の農的活動により、福祉施設・福祉サービス利用者等が他の地域資源や地域住民等と交流し結びつきを深めていくことと定義した。現在、一般的に解釈されているような障害者の就労支援またはそれに類する活動のような、狭義の概念ではない。農的空間の利用、あるいは農的活動を福祉に応用する取組の総体のことである。
さて、「①農福連携による高齢者と子どもとの世代間交流活動の実施」であるが、実施のためには用地の整備が必要でありその調整に時間がかかったため、結論として、当初予定していた特別養護老人ホーム敷地内での活動には至らなかった。同老人ホームの施設長・副施設長、併設の地域包括支援センター職員らと継続的に打ち合わせを行い、施設法人による敷地内の樹木植栽場所の整備を経て、8月31日に入所高齢者と近隣保育園児が交流するための圃場の準備までは行うことができた。
しかしながら、夏季は炎天下での作業により日射病・熱射病等の危険性があることから、保育園児も施設入所の高齢者も外出を控える状況であり、すぐに活動することが困難であった。その後、秋植えの作物の選定等の準備を行っていたが、徐々にインフルエンザ等感染症の流行時期と重なる11月~3月となり、園児・高齢者とも交流が困難になった。以上のような理由から、農作業・園芸を通じた交流活動の準備は整ったものの、共同研究費期間中には実際の交流活動には至らなかった。
なお、この準備の過程において、学内の空閑地を利用して特別養護老人ホーム敷地内の圃場に植えるための作物栽培を試行し、ボランティアやゼミ所属の学生の協力を得てサトイモ・ゴーヤの地植え、エダマメ・サツマイモ・イチゴ・カボチャ等のプランター栽培を行った。ゴーヤは当該特別養護老人ホームから苗の提供を受け、また、カボチャは近隣の保育園から株の譲渡依頼を受ける等、農作物の苗を契機に本学をハブとする地域交流の拡大につながった。また、学内空閑地の耕運や作付けの際には、学内を散歩する本学隣接の障害者支援施設の利用者・職員、他の複数の保育園の保育園児と引率の保育士、近隣住民と会話をする機会が幾度もあり、このような準備活動自体が地域の人びとの交流に資することが示唆された。これらの交流は定量的な測定を行ったわけではなく、現時点では検証できているとはいえない。
次に「②農福連携による世代間交流活動が地域に及ぼす影響・効果の検証」であるが、②は①の実施による影響と効果の検証であることから、厳密には当初の計画遂行には至らなかった。
ただし、先述のように特別養護老人ホームの敷地内の圃場で行う入所高齢者と保育園児との世代間交流活動の準備を進める過程で、本学を中心としてさまざまな社会資源のネットワークが構築される結果となった。研究計画においては、「予想される結果と意義」として、「①高齢者の社会的役割を創出(再生)することができる」「②次代の福祉社会を担う人材を育てることにつながる」「③地域の総合的なネットワーク構築の推進力となり、地域社会の再生(あるいは創生)と活性化につながる」の3つを掲げた。前2つには言及できないが、少なくとも3つ目の地域社会の再生と活性化には寄与したものと考える。
最後に、本共同研究費による取組みは、2024年度科学研究費基盤研究(C)「農福連携による世代間交流の効果と地域への影響」および農林水産省「令和6年度農山漁村振興交付金(都市農業機能発揮対策(都市農業共生推進等地域支援事業))都市農地創設支援型 宅地等の空閑地を活用した農的空間の創出を支援する取組」の採択につながった。したがって、共同研究費の研究計画で提示した課題は、今後もこの2つの研究事業で継続して取組む予定である。当該研究は、これらの予備的研究として位置づける。
研究成果の活用・提供予定
今年4月に採択された科学研究費基盤研究(C)および農林水産省農山漁村振興交付金(都市農業共生推進等地域支援事業)の予備研究として活用する。
研究成果は、今年度の環境福祉学会、または人間福祉学会等での口頭発表を検討している。
研究代表者
小原 眞知子
研究課題
『アジア諸国におけるソーシャルワーク専門職養成の実態と課題に関する国際比較研究:資格保持者の登録制度の進展』(修正)
研究結果の概要
近年、アジアのソーシャルワーク専門職には、これらの社会福祉的課題に対応できる力量が求められている。これまでは各国政府は社会福祉政策と制度で社会問題に対応しようとしてきた。社会問題とは生活にかかわる問題であり、個別性という特徴を持つ。こうした状況下において、各国はソーシャルワーク専門職の力量向上とともに、ソーシャルワーク専門職の国際的な連携・協働が求められる状況に遭遇している。
日本、他のアジア諸国から学び、専門的な知見の共有を促すことで、アジアのソーシャルワーク専門職養成および専門職制度の進展に貢献することが期待される。この目標を達成するためには、各国のソーシャルワーク専門職養成の背景と登録制度の進展を含めた現状を把握し、その特徴とニーズを理解することが前提でとされる。
今年度はアジアにおけるソーシャルワーク専門職養成、特に資格保持者の登録制度の進展状況を含めた実態と課題を明らかにするために、まずは日本のソーシャルワーク専門職養成について職能団体、教育関連の団体から情報収集を行いまとめた。
研究成果の活用・提供予定
- 2024年度は2023年度の成果も含めて、アジア太平洋地域の専門職養成について情報収集を行い、比較分析によって、アジア諸国の共通点 と各国の特徴について整理する予定である。(報告書作成)
- 共同研究者との研究交流会を開催する(2024年6月)
- 2024年度には各国の専門職・研究者・教育者に調査内容報告の事前作成を依頼し公開のオンライン・シンポジウムを実施する。
研究代表者
菱沼 幹男
研究課題
福祉教育・ボランティア学習における当事者の「語り」の構造と媒介者の役割
研究結果の概要
当事者の「語り」による福祉教育・ボランティア学習プログラムにおける媒介者の役割と聞き手と語り手への働きかけの内容を把握し、今後の課題について考察することを目的として、2023年4~6月に大学教員3名、大学院教員1名、社協職員1名を対象にインタビュー調査を行った(日本社会事業大学研究倫理委員会承認22-0602)。質的分析の結果、60のコードが抽出され、16のカテゴリーが生成された。当事者の「語り」による福祉教育・ボランティア学習プログラムを実施するにあたり、媒介者は自らの問題意識を整理したうえで、語り手である当事者との事前準備を行い、聞き手へのフォローを行うことの大切さ等のプログラム構造が見いだされた。
研究成果の活用・提供予定
日本福祉教育・ボランティア学習学会第29回新潟大会での課題別研究で調査結果の報告を行った(2023年11月5日)
今後、日本社会事業大学研究紀要への論文投稿を予定している
研究代表者
有村 大士
研究課題
韓国スタディーツアー
研究結果の概要
2024年3月17日(日)から3月22日(金)にかけて、韓国ソウル、そして昌原、釜山へのスタディーツアーを実施した。
日本と同じ東アジアに属する韓国でも、少子高齢化は進行し、人口減少なども含め、日本と同様の課題に直面している。しかし、両国の福祉サービス発展の歴史的経緯や文化が異なることにより、日本とはまた異なった切り口で課題に向き合っており、同様の課題を違う角度で検討できることは大きな学びになった。なお、スタディーツアーの過程で、2回、大学生同士の交流会を行い、実習や大学での学びについて、お互いに学び合った。
なお、訪問先は以下の通りである。
- ソウル障害者福祉館
- 東大門総合社会福祉館
- 慶南総合社会福祉館
- 慶南統合老人支援センター
- 児童養護施設 仁愛の家
- 慶南児童保護専門機関
- 統栄市家族センター
- ダハムゲ(共に)ケアセンター
- 私立三育大学
- 国立昌原大学
参加した学生と共に、振り返りを行い、報告書を作成した。
研究成果の活用・提供予定
参加した学生たちと、全国生活協同組合連合会助成金事業について報告書を作成した。また、参加した学生たちと共に、社大福祉フォーラム(第62回日本社会事業大学社会福祉研究大会)にて報告を行う予定である。