社会福祉実践研究(令和7年度)

研究代表者

北川 進

研究課題

テーマ

「認定社会福祉士教育基幹ルートの活用状況及びグループスーパービジョンの実施方法と効果に関する研究」

目的

認定社会福祉士認証・認定機構は、2020年度より教育基幹ルート(大学院ルート)を創設し、研修取得単位数及びスーパービジョン実績単位数の軽減を行った。
本学専門職大学院においては、これらの措置を踏まえ、専門職大学院の講義科目を認定社会福祉士研修科目として登録し、在籍中に共通専門研修、分野専門研修、その他科目の必要単位が取得できるようにするとともに、スーパービジョン実績について、グループスーパービジョンにより長期履修生は在籍中に、標準履修生は修了後に単位取得できる体制を整えた。
一方、教育基幹ルート創設後の専門職大学院修了生の認定社会福祉士申請状況については把握されていない。また、他大学院の実施状況について不明であり、他の実践から学ぶこともできない状況となっている。
本研究では、本学教員が行うグループスーパービジョン実施までの経過を振り返り、専門職大学院のグループスーパービジョンが認定社会福祉士の養成にとって有効である点を、スーパーバイザー教員同士の語りの中から明らかにする。また、受講者に対するヒアリング調査により受講者の受講動機や効果について検証する。さらに、専門職大学院修了生の認定社会福祉士申請状況を調査するとともに、他大学院、都道府県社会福祉士会における認定社会福祉士グループスーパービジョンの実施状況及び実施内容について把握する。
これらをもって、本大学院の認定社会福祉士基幹教育ルートにおけるグループスーパービジョンが、認定社会福祉士の養成にとって有効である点を明らかにし、今後のグループスーパービジョンの展開を考えるための基礎資料とすることを目的とする。

研究結果の概要

  1. 認定社会福祉士基幹教育ルートの実態把握
    2年研究の1年目として、認定社会福祉士認証・認定機構に対して、他大学院における教育基幹ルートに伴うグループスーパービジョンの実施状況及び、都道府県社会福祉士会における認定社会福祉士単位取得のためのグループスーパービジョンの実施状況について問い合わせを行った。
    その結果、教育基幹ルートとしてグループスーパービジョンを実施している大学院は、本学を置いて他にないことが把握された。
    また、都道府県社会福祉士会においては、登録スーパーバイザーが、認定社会福祉士のためのスーパービジョンを個別に行ってはいるものの、グループスーパービジョンについては、スーパーバイジーを集めてグループ化する必要があること、スーパーバイザー及びグループを構成するスーパーバイジー相互の日程調整が必要となり、事務的な煩雑さがあることなどを理由として実施されていないことが把握された。
    以上から、認定社会福祉士基幹教育ルートにおけるグループスーパービジョンを実施するためには、大学院の在籍生や同期生などグループ化しやすい構成員を前提に、スーパーバイザー及びグループを構成するスーパーバイジー相互の日程調整がしやすい大学院の時間割の中で時間設定して行うことが要件となることが明らかとなった。

  2. 専門職大学院スーパービジョンの陪席
    共同研究者の曽根は、専門職大学院の木戸、北川の両教員が実施したグループスーパービジョンに陪席し、グループスーパービジョンの実際を見聞した。スーパーバイジーのグループは、専門職大学院で同時期に在籍した標準履修生及び長期履修生で構成されているため、ゼミや授業科目において相互に知り合っている院生同士であり、スーパーバイザーとも信頼関係が構築されている。
    スーパーバイジーから提供される事例や課題は、グループにおける信頼関係が前提にならないと表出することが困難な内容であり、基幹教育ルートで行うグループスーパービジョンの意義と効果を感じるものであった。

  3. 家族療法学会における発表
    2025年9月に開催された日本家族療法学会において、専門職大学院で実施したスーパービジョンについて口頭発表を行い、その抄録は『家族療法研究』42(2)に掲載された。
    木戸は「職場組織システムでのソーシャルワークスーパービジョンへの多世代家族療法モデルの活用例」として、本学で実施した、認定社会福祉士制度に基づくグループスーパービジョンの、個人記録をもとに行った内容分析の結果を報告した。リフレクティング、ロールプレイを中心としたセッションを振り返り、組織や地域の各システムの交互作用等の影響性があることを明らかにした。
    須江は「リフレクティング・チームの手法を導入した事例検討の意義とその可能性に関する検討-事例提供者と参加者の質的分析から-」として、授業で用いた事例省察について単一事例報告を行った。この手法が実践の認証や感情の往還を可能にし、事例提供者のエンパワーのみならず、他の参加者自身の実践の省察と前向きな気持ちを促進する可能性を示唆した。リフレクティング・プロセスは、認定社会福祉士基幹教育ルートにおけるグループスーパービジョンでも採用している。

  4. 結果
    これらから、本学専門職大学院において実施している「専門職大学院スーパービジョン」は、認定社会福祉士基幹教育ルートにおける唯一無二のグループスーパービジョンであるとともに、本学専門職大学院の特色として展開することに意義があることが明らかとなった。

研究成果の活用・提供予定

1年目の研究結果を踏まえ、2年目の研究につなげる。

具体的には、本学社会福祉研究大会(学内学会)において、研究代表者及び共同研究者による、専門職大学院におけるグループスーパービジョンを担当するスーパーバイザー教員の考え方を座談会形式で意見交換し整理すること、グループスーパービジョン修了者の受け止めについてインタビュー形式で整理すること、これらを総じて本学専門職大学院の認定会福祉士基幹教育ルートにおけるグループスーパービジョンが、認定社会福祉士の養成にとって有効である点を明らかにし、今後のグループスーパービジョンの展開を考えるための基礎資料とする。
また、研究成果をまとめ、2027年度本学社会福祉研究大会(学内学会)で報告するとともに、本学紀要に掲載することを予定している。

研究代表者

菱沼 幹男

研究課題

超高齢団地における介護・生活支援ニーズに関する研究

研究結果の概要

  1. 滝山地域安心つながり連絡会議における実践研究
    URとの研究協定に基づき、滝山地域安心つながり連絡会議に参加し、東久留米市滝山団地自治会、東久留米市社会福祉協議会、東久留米市西部地域包括支援センターとともに協議をおこなった。
    具体的には、7月14日に滝山団地での健康・暮らしの相談室の実施に向けて協議した際に、全世帯を対象としたアンケート調査の実施を予定していることについても関係者に説明し、了解を得た。9月30日には健康・暮らしの相談室が開催され、10月27日には振り返りが行われ、団地内のニーズ把握と関係形成を図った。2026年1月19日には、次年度の取り組みについて協議を行う際に、アンケート調査票作成に向けた打ち合わせの日程調整をおこない、調査に向けての準備を進めた。

  2. 超高齢団地における住民ニーズの経年調査研究
    次年度に滝山団地の全世帯を対象としたアンケート調査を実施するための視察をおこなった。
    前回の調査実施(2015年)から現在に至るまで、コロナ禍により人との交流や共に飲食をする機会が減ったほか、当該団地内にある「ダイニングカフェ滝山」の営業日及び営業時間が減り、担い手不足が大きな課題となっている。さらに高齢化も進行し、団地内における支え合いの関係の構築が喫緊の課題となっている。これらの状況を踏まえ、他の団地では住民の主体的な活動がどのように展開されているのか把握すると共に、本研究課題のアンケート調査項目および滝山団地内の活動に反映させることを目的として視察をおこなった。概要は以下のとおりである。
    (1) 視察日程:2026年3月22日~24日
    (2) 視察団地:福岡県内のUR団地4か所(①日の里団地、②星の原団地、③若久団地、④徳力団地)
    (3) 視察地の選定理由
    滝山団地とほぼ同時期(1960年代から1970年代半ば)に建設され、住民が主体となり団地内の活動を展開してきた4か所についてURの職員から紹介を受け、決定した。URの地域医療福祉拠点化に着手しているほか、くらしつながるサポーターによるあんしんコール(電話による安否確認)がおこなわれている点も共通している。
    (4) 少子高齢化が進行する団地における取り組み
    ①入居者の高齢化に伴うURおよび自治会の活動
    入居開始当時は子どもが多く活気あふれる状況であったが、現在は高齢者の単身世帯が目立つ。こうした中で、くらしつながるサポーターを中心とするURの職員および団地自治会による見守り活動や健康増進事業が展開されている(共通)。
    ②URおよび関係機関を中心としたつながりの場の創出
    高齢者が外出する機会の創出、世代を問わず集うことができる拠点の創出が行われている。例えば社協とURの協働による居場所づくり(日の里団地)、社協とURが住民の繫がりを創出する場として始めたカフェが後に住民主体のカフェサークルに発展した取り組み(若久団地)がある。公園や集会所に集いやすくするための環境設計やイベントの開催は共通していた。
    ③住民が主体的に支え合う活動
    団地内に既存のサークルがあるほか、団地の安心交流拠点としてカフェを運営している例(星の原団地)がある。また、当時は夏祭りを二日間かけて開催するほど子どもが多く活気あふれていたが、現在は75歳以上の入居者が多くを占める団地では、団地自治会を中心に高齢者の医療や介護の問題に対する活動が展開されている。例えば75歳以上の住民向けのふれあい便りの発行、福祉協力員と連携した見守り活動、団地内における小地域サロン活動の促進(現在19か所)等である(徳力団地)。
    ④団地住民・学校・企業・行政が協働する地域再生事業
    団地の今後50年を見据え、1棟丸ごと活用した団地再生プロジェクト「ひのさと48」がオープンした例がある。認可保育所、カフェ運営等、団地住民・学校・企業・行政等が協働で地域内の新しいつながりを生み出す取り組みをおこなっている(日の里団地)。

研究成果の活用・提供予定

  1. 滝山地域安心つながり連絡会議
    アンケート調査の結果は、UR、滝山団地自治会、東久留米市社会福祉協議会、東久留米市西部地域包括支援センターに報告し、今後の滝山地域における活動を考える材料とする。

  2. 超高齢団地における住民ニーズの経年調査の実施
    調査項目に今回実施した視察を反映させ、「サービスの受け手」としての住民のみならず「地域づくりの担い手」としてのニーズ把握ができるような質問を新たに設定する。この質問は、地域包括支援センターが新規事業として立ち上げたオレンジカフェの担い手を把握することにもつながる。

研究代表者

小原 眞知子

研究課題

『アジア太平洋諸国におけるソーシャルワークの教育・養成のための基準策定に関する国際比較研究:グローバル教育・養成のためのグローバル・スタンダードからの検討』

研究結果の概要

2014年に採択された「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義(Global Definition of Social Work)」および2018年に改訂された「ソーシャルワークにおける倫理原則のグローバル声明(Global Social Work Statement of Ethical Principles)」を受け、国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)と国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)は、「ソーシャルワーク教育・養成のためのグローバル・スタンダード(Global Standards for Social Work Education and Training)」を改訂した。改訂されたグローバル・スタンダードは、世界の5地域(ヨーロッパ、北アメリカ、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア太平洋)において展開されることが想定されている。しかしながら、アジア太平洋地域においては、その適用方法や地域特性を踏まえた展開について、十分な検討や成果の共有が行われていない状況にある。
本学は、アジア太平洋地域におけるソーシャルワーク教育の拠点として、各国との連携を通じて専門的な知見を共有し、ソーシャルワーク専門職養成および専門職制度の発展に貢献することが期待されている。
本研究の目的は、アジア太平洋諸国におけるソーシャルワーク教育および専門職養成の特徴とニーズを把握し、それらを踏まえた「アジア太平洋版ソーシャルワーク教育・養成のためのグローバル・スタンダード」の適用および開発に向けた基礎的知見を得ることである。

本研究では、各国におけるソーシャルワーク教育および専門職養成の実態と課題を把握するため、改訂版グローバル・スタンダードの主要な項目に基づき調査を実施した。

調査の分析枠組みは以下の9領域である。
① ソーシャルワーク専門職の教育・養成に関する基準
② プログラムの目的および学習成果に関する基準
③ 実習教育を含むプログラム・カリキュラムに関する基準
④ コアカリキュラムに関する基準
  ソーシャルワーク専門職の領域
  ソーシャルワーク専門知識の領域
  ソーシャルワーク実践方法の領域
  ソーシャルワーク専門職のパラダイム
⑤ 教員に関する基準
⑥ 学生に関する基準
⑦ 組織構造、運営、ガバナンスおよび資源に関する基準
⑧ 文化的・民族的多様性およびジェンダー包摂性に関する基準
⑨ ソーシャルワーク専門職の価値および倫理に関する基準

各国の報告内容を地域特性や共通課題に基づいて整理・分析し、比較検討を行った。
調査結果の共有と検討のため、2025年11月にスリランカで開催されたIFSWアジア太平洋地域会議において国際シンポジウムを開催した。

(1) 実施体制
主催:日本社会事業大学
共催:国際ソーシャルワーカー連盟アジア太平洋地域(IFSW Asia Pacific Region、IFSW-AP)
協力:アジア太平洋ソーシャルワーク教育連盟(Asian and Pacific Association for Social Work Education、APASWE)

(2) 共通報告枠組み
各国には以下の共通項目に基づく報告を依頼した。
・Current state and challenges of social work education(ソーシャルワーク教育の現状と課題)
・Actions taken to address these challenges(課題解決に向けた取り組み)
・Reasons behind any gaps in fulfilling the Global Standards recommendations(グローバル・スタンダードを満たす上での課題およびその背景)
・Efforts to improve social work education in alignment with the Global Standards(グローバル・スタンダードに沿った教育改善への取り組み)

(3) 参加国
アオテアロア・ニュージーランド、日本、韓国、フィリピン、スリランカ、台湾、インドの7か国であった。

なお、当初は小地域(サブリージョン)単位での報告を予定していたが、実際にはフィリピンのみがASEAN地域を代表して報告を行い、その他の参加国は自国の状況について報告した。

研究成果の活用・提供予定

シンポジウムでは、7か国の報告者がそれぞれの分析結果を発表し、アジア太平洋地域におけるグローバル・スタンダードの適用状況と課題について議論を行った。
以下の通り、
① ソーシャルワーク教育制度の発展段階に大きな地域差が存在すること
② 専門職資格制度や教育認証制度の整備状況が国によって異なること
③ 実習教育や専門職養成における人的・財政的資源の不足が共通課題であること
④ 文化的多様性や先住民族の知識体系を教育にどのように位置づけるかが重要な論点であること
などが明らかとなった。
研究成果は報告書として取りまとめ、本学の社会事業研究所で印刷版を発行するとともに、PDF版をIFSWの下記ウェブサイトに掲載した。
https://www.ifsw.org/product/books/development-of-standards-for-social-work-education-training-in-asia-and-pacific-countries/
本研究はアジア太平洋地域におけるソーシャルワーク教育および専門職養成の現状と課題を体系的に整理した初期的な試みである。
今後は、より多くの国・地域を対象とした調査を実施し、アジア太平洋地域全体の実態把握を進める必要がある。また、地域固有の文化的・社会的背景を反映した「アジア太平洋版ソーシャルワーク教育・養成のためのグローバル・スタンダード」の開発に向けた継続的な議論と実践が求められる。
本研究の成果は、アジア太平洋地域におけるソーシャルワーク教育の質保証と専門職養成の発展に寄与するとともに、グローバル・スタンダードの地域的展開に向けた重要な基礎資料となることが期待される。

研究代表者

木戸 宜子

研究課題

現任実践者のためのソーシャルワーク実践教育モデルの開発

研究結果の概要

本学、専門職大学院・通信教育科には、現任実践者を含む社会人教育を多様な学びのプロセスを経ている学生が在籍している状況をふまえ、本研究は、ソーシャルワーク実践経験をもつ教員が実践教育にあたることはもとより、修了生や実務経験豊富な実践者が、教育者やスーパーバイザーとなり後進を養成、育成していく、学びの循環、効果的な教育循環過程をつくるための仕組みづくりを探ることを研究目的とした。

研究企画として、「ソーシャルワーク実践教育セミナー ~学びの循環に向けて~」を実施した。また先駆的な教育システムを構築している看護分野について、長野県看護大学の先生方のご協力をいただき情報交換会を実施した。

研究成果の活用・提供予定

  • 「ソーシャルワーク実践教育セミナー ~学びの循環に向けて~」
    2026年2~3月に、日本社会事業大学ホームページでオンデマンド配信
  • 共同研究報告書(冊子)を作成、学内および後援団体、関係者等に配布

研究代表者

Jeevanath Devkota

研究課題

Between Opportunity and Hardship: Nepalese Restaurant Workers in Japan

研究結果の概要

We found that restaurant workers with longer stays in Japan achieved improved economic status, supported their children's education, and gained social prestige in Nepal. However, nearly all respondents worked six days per week, with a minimum of 10 hours daily, without receiving overtime pay. Additionally, two-thirds reported monthly salaries lower than those stipulated in their contracts. Newly arrived workers generally earned less and worked longer hours than more established employees. Although working hours and pay are typically set in contracts, employees often lack the confidence to challenge their employers.

日本における滞在期間が長いレストラン労働者ほど、経済的地位が向上し、子どもの教育を支援し、ネパールにおいて社会的評価を得ていることが明らかとなった。しかし、ほぼすべての回答者が週6日、1日最低10時間以上働いているにもかかわらず、残業代を受け取っていない状況にあった。さらに、約3分の2が契約で定められた水準を下回る月給であると報告した。新規来日労働者は、比較的定着している労働者に比べて賃金が低く、労働時間も長い傾向がみられた。労働時間や賃金は通常、契約によって定められているものの、従業員は雇用主に対して異議を唱える自信を欠いている場合が多い。

研究成果の活用・提供予定

The draft manuscript is currently under review by the co-authors. In addition, the paper is scheduled to be presented on May 2, 2026, at the Quest International Conference on Business, Technology and Hospitality for the Sustainable Future to obtain comments and feedback. The target journal for submission has not yet been determined and will be decided after incorporating feedback from the conference and co-author reviews.

共著者による原稿の査読が現在進められている。加えて、本論文は2026年5月2日に開催される「Quest International Conference on Business, Technology and Hospitality for the Sustainable Future」において発表予定であり、コメントおよびフィードバックを得ることを目的としている。投稿先の学術誌については現時点では未定であり、学会でのフィードバックおよび共著者の査読結果を踏まえて決定する予定である。