社会福祉実践研究(平成29年度)

Community-Based Practiceを実現させる新たな地域包括支援体制構築への提言 ―清瀬市"つなぎ""つむぐ"支援に関する調査

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 贄川 信幸

研究課題

Community-Based Practiceを実現させる新たな地域包括支援体制構築への提言 ―清瀬市"つなぎ""つむぐ"支援に関する調査

研究結果の概要

本研究の目的は、清瀬市内のサービス提供機関や任意団体・関係者等を対象に、各関係機関・関係者が日頃利用者から見聞きしている生活課題、さらに、当該機関・関係者が直接対応する生活課題を超えているが地域で支援していく必要があるともいえる潜在的ニーズを把握することである。関係機関・関係者等が世代や対象分野を超えたつながりをつくり、世代や対象分野を超えた"家族まるごと"支援を推進するための課題と方策を検討する。

調査対象は、清瀬市『生活便利帳』と清瀬市社会福祉協議会『サロンまっぷ』に掲載されている事業・サービスを実施する全関係機関・関係者378か所・人である。センター的機能を有する機関については、最大3人への回答を求めた。宛先不明等は10件であり、回答数は116件であった。回答者の内訳は、高齢者分野が40件(34.5%)と最も多く、次いで子ども分野25件(21.6%)、民生委員・児童委員が23件(19.8%)、サロン・多分野13件(11.2%)、障害児・者分野11件(9.5%)と続く。活動地域は、11地域それぞれで(複数回答可)30件から42件であった。

「あなた(事業所)の利用者やその家族から困っていると聞いている事」47項目について、5件法で答えてもらったところ、各項目の平均値は2.09から3.59であり、上位5項目は、「いろいろな制度/サービスの手続きが複雑で分からない」(平均値3.59)、「一人暮らしや高齢世帯の方の安否が心配である」(3.29)、「地域の施設・機関・団体等が地域住民に知られていない」(3.26)、「通院などの付き添い/手続きに手助けしてくれる人がほしい」(3.14)であった。

「従事する活動・機関・団体・組織等の課題」10項目に関して、「そう思う」と「そう思わない」で回答を求めたところ、「活動の担い手が育っていない/不足している」が最も多く、次いで「支援を必要としている人に情報を届けるのが大変である」、「サービス/活動資金不足を感じる」、「支援に必要な制度やサービスが不足している」、「他機関・団体との連携・つながりが不十分である」が続いた。
「あなた(事業所)が見聞き/相談されている生活課題について/どうしてよいか困っている内容」に関する自由記述では、家に閉じこもりがちな方やひとり暮らしの方の健康問題・体調不調時の対応、利用者の家族の悩み、近隣トラブル(認知症高齢者と近隣住民)、介護サービスではカバーしていない困り事、訪問サービスにおける夜間や週末の利用ニーズ、利用者の緊急時の対応等があがっている。また、「あなた(事業所)が十分に対応できていない生活課題あるいは対応するサービスがないといった生活課題」では、地域によって、公共交通手段が不便、サロンも少ないという地域がある、交流する場となっているサロンや老人クラブでの設備等のバリア等の記述があった。地域における機関等々とのつながりについては、「連携がだいぶ取れてきた」等肯定的な記述が多く、「もっと気軽に話ができるようにしたい」、「集まれる場が多くあるといい」、「お付き合いや顔の見える関係になるきっかけが今後も作っていければ」との意見があった。

本調査を通じ、清瀬市のサービス提供機関・団体・関係者それぞれで、自機関・団体等がサービス提供する対象者・利用者の生活課題から派生している問題や対応に困っている、充分に対応できていない問題等が明らかとなった。連携・協働については一定評価されており、より顔の見える気軽な関係づくりを望む声がある。一方で、自機関・団体等の課題としては、担い手の育成や数の不足、資金不足や制度・サービスの不足があがっており、清瀬市内の需要に対する供給量が追い付いていない様がうかがえる。

平成27(2015)年9月に厚生労働省の「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現 -新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン-」において、「全世代・全対象型地域包括支援体制」の構築が示された。本調査の結果からも、自組織のサービス提供対象者・利用者にとどまらず、横のつながりをより持っていく場を増やし、Community-Based Practiceを展開していくことが望まれる。今後、本調査結果を、回答者の属性との関連から分析するなどし、清瀬市住民の潜在的ニーズおよびその対応方法において明らかにしていく予定である。

研究成果の活用・提供予定

  • 報告書の作成と関係機関への配布・Web配信
  • 清瀬市のサービス提供機関・関係者等を対象とした、本調査結果と分析の共有と今後の全世代・全対象型地域包括支援体制づくりに向けた意見交換の機会となるワークショップの開催

研究成果物