灯し、紡ぐ人

#16

ありたい姿を尊ぶ姿勢を灯す Chapter 01

すべてはご利用者様の笑顔のために。
働きやすい職場づくりに励む

具体的なお仕事内容についてお聞かせください。

全国に360拠点以上の高齢者向けホームを展開する株式会社ベネッセスタイルケアで、東海・西日本エリアの92拠点を管轄する採用部の部長をつとめています。

新卒やキャリア(中途)採用、パートスタッフの採用活動はもちろん、各拠点と連携して、どういう人財が必要で、採用と雇用にどの程度コストが発生するのかを考えるのも採用部の仕事です。

採用活動においては、募集段階から入社後のフォローまで幅広く求職者の方々に関わります。私たちの話を聞いて介護の仕事に魅力を感じ、利用者の方々と接しながらいきいきと働く職員の姿を見ることが、大きなやりがいです。

現場で活躍するスタッフの姿を社会に伝えたい、介護職の魅力を伝える発信者でありたいという思いで、日々の業務にあたっています。

これまでに、どのようなことに挑戦されたのでしょうか。

直近では、介護職の大幅な処遇改定プロジェクトに参画しました。私が特にこだわったのは、これから新しく介護の仕事を始めたい方や他業界から転職を志す方のために、初任給を大幅に引き上げることです。日々の採用活動を通して求職者の方々からいただいた切実な声を、なんとか制度設計に盛り込みたいと採用担当の立場から伝えました。

同業・他業の他社の待遇を徹底的にリサーチしてどのような金額設定にするか議論を重ね、ようやく社内向けに新しい処遇改定案を発表できた会議では、感極まって涙を流してしまいました。私が介護職に就いたばかりの頃は、介護の専門性はまだまだ認められておらず、ネガティブなイメージを持たれることが今よりも多かったように思います。しかし、この仕事には高い専門性と価値があります。それが処遇という確かな形で認められ、現場に還元されるのです。新時代を切り拓く制度を自分たちの手でつくり上げ、社会に発信できる段階まで来たのだと思うと、感慨深かったですね。

ほかに、当社でいま推進しているのがICTの活用です。目的は、ご利用者様のQOL(生活の質)向上や人財育成、多職種でお一人おひとりの「ありたい姿」を実現する時間を生み出すことにあります。

具体的には、業務を細分化し、デジタル化を進めた方がよい部分とそうでない部分を切り分けて、業務の効率アップを図っています。配膳ロボットを活用することで職員がダイニング内を何度も往復する手間をなくす。スマートフォンによる顔認証や二次元コードを用いた服薬ソリューションを導入し、ご利用者様の誤薬を防いで職員の心理的負担を減らす。そのような取り組みの結果、スタッフの業務に時間が生まれ、ご利用者様の「ありたい姿」に寄り添い、生活に彩りをそえることができていると思います。

ほかにも会社のダイバーシティ推進に貢献するなど、数々のチャレンジを経験してきました。その先にはいつも、ご利用者様の方々が最期まで自分らしくいられるようにという願いがありました。この「ご利用者様本位(本人主体)」の姿勢は、日本社会事業大学時代に培われたものにほかなりません。

その人の背景に思い巡らす力を灯す
Chapter 02

すべてのコミュニケーションに通ずる ご利用者様本位の考え

すべてのコミュニケーションに 通ずるご利用者様本位の考え

日本社会事業大学に編入したきっかけと、大学時代のご様子についてお聞かせください。

もともと他校で福祉を学んでいましたが、実習を経て「最善のケアを実践するためにはもっと専門知識を身につけなければ」と考えるようになりました。そこで社会福祉士の国家資格取得を目指し、日本社会事業大学への編入を決意したのです。

編入生としての大学生活は、想像をはるかに上回る忙しさでした。必修科目のほかに「あれも学びたい、これも学びたい」と授業を詰め込む日々。実習や国家試験の勉強、就職活動も並行していたため大変ではありましたが、充実感で満たされていました。

当時所属していた下垣光先生のゼミでは、事例一つ検討するにしても、先生が常に私たちにこう問いかけておられました。

「この方は、なぜこういう行動に出たと思う?」「そのとき、どんな気持ちだったんだろうね?」。

行動の裏にあるその方の歴史や背景を想像し、グループワークで仲間と話し合いを重ねたことも度々でした。

先生が折にふれて教えてくださった、この「ご利用者様本位(本人主体)」の考えは、チーム力を高め、求職者の思いに寄りそうなど、さまざまなコミュニケーションの場面で活かされています。

卒業後は、一度就職を経て日本社会事業大学の専門職大学院に進学されていますね。

はい。大学卒業後、私は介護職として現場に身を置きました。中堅と呼ばれる立場になり、外の世界でもう一度視野を広げたいと考えたときに、頭に浮かんだのが専門職大学院の存在でした。

入学してみると、同期は年上の方ばかり。経営層が多く、私のような現場の介護職はほとんどいなかったと思います。授業中の議論では「いち介護職員としてこう思う」と率直に考えを述べることが多かったのですが、同期の方々はいつも「(自分にはない視点で)貴重な意見だ」と温かく受け止めてくださっていました。同じ学生の皆さんとの交流から得た視野の広がりや知識の深まりは、ここでの学びがあったからこそ。感謝の思いでいっぱいです。

個性豊かな先生方や実践者の方々と、福祉の未来について徹底的に語り合える点は、専門職大学院ならではの魅力ですね。一人ひとりに譲れないこだわりがあるからこそ、熱のこもった激しい議論になりました。現場での実践と大学院で学んだ理論を何度も行き来しながら、互いのアイデアを認め、高め合っていく。こうした環境で培われた知見やマインドは、私にとって何物にも代えがたい財産となりました。

親しみ、敬う気持ちを社会に灯す Chapter 03

高齢者への温かな思いやりが
福祉の裾野を広げる

チームをマネジメントするうえで大切にしているのは、どのようなことでしょうか。

いくつかありますが、代表的な例で言えば、チーム全体でよりよくしようという意志を共有し、多様なアイデアを認め合う環境をつくることです。私は常々、周囲に「突拍子もないアイデアは無いかしら?」と問いかけます。ものごとがよりよくなる原点は、1人の気づきからいつも始まると思います。正しいか正しくないか、できるかできないかではなく、まずはメンバーが委縮せずに思っていることを伝えることができれば、きっと、チームは進化し続けます。互いの考えを認め合い、熱意を重ねていける。そういう活気あるチームづくりを心がけたいです。

今後の展望について教えてください。

認知症ケアや介護技術においてカリスマと呼ばれるような専門性の高い人財を育成し、介護サービスの正当な社会的評価を確立していこうと考えています。

加えて、私自身の子育て経験も踏まえ、地域社会のなかでこどもたちが自然に高齢者や福祉とかかわれる機会を生み出したいですね。

日本の高齢化率(65歳以上の人口割合)は、2045年には30%以上に達するといわれています。今後は多様な産業の商品・サービスが、シニア向けにシフトしていくことでしょう。高齢者や福祉の視点を考慮せずにビジネスを展開することはもはや不可能と言えます。

こどもの頃から高齢者と接する機会があれば、「お年寄りに優しくしたい」「困っている人を助けよう」という温かい気持ちが自然と芽生えると思います。地域社会のつながりが希薄な時代になっていますが、そのような機会が増えれば自ずと思いやりあふれる社会の実現につながるはずです。こどもたちと高齢者の温かな交流が、巡り巡って福祉の裾野を広げていくと信じています。

Message

「誰かのために」「何かのために」という思いこそ、福祉の本質です。私たちが支援する方々はみな、誰かにとっての大切な父や母、夫や妻、あるいは子であり、お一人おひとりに人生があります。ご本人・ご家族が抱く「ありたい姿」「あなたのために」という思いを支え、その方らしい生き方に彩りを添えること。福祉の力はまさにこうした場面で発揮されるのです。
変化の激しい現代においても、人々が共に暮らし、よりよい社会を目指す限り、福祉の視点は決して色あせません。多くの可能性が眠っている領域だと思います。日本社会事業大学での学びは、人々の人生を、そして社会の未来を支えていきます。